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引きこもりからの復帰に過干渉は禁物!大事なのは周囲が「焦らず」「見守る」姿勢

引きこもりからの復帰に過干渉は禁物!なにより大事なのは周囲が「焦らず」「見守る」姿勢
中西 直紀
キャリアファーマー
正社員就職の支援も行っており、20年以上の引きこもり経験者を社会復帰へと導いたケースもある。多方面にわたる経験とワイドな視点からどんな相談にも真摯に対応ができ、たくさんの引き出しを持ちあわせている。

海外では『Hikikomori』という言葉が使われるほど、引きこもり問題というのは深刻な社会現象となっています。

家族が亡くなって収入が途絶えたときに、引きこもり当事者は「餓死かホームレスか」といった極論を導き出す傾向があります。

そういった事態にならないためにもできるだけ早く復帰することが求められるのですが、長期化した引きこもり問題を自分たちだけで解決するというのは非常に困難なことであり、時間もかかります。

その復帰には家族だけでなく、専門家など第三者による手助けが必要不可欠となってきます。

引きこもりからの復帰に近道はない

2015年に実施された内閣府の調査によると15歳~39歳の引きこもりは約54万人。2018年には初めて40歳~64歳の引きこもり数が調査され、その数なんと61.3万人と発表されました。

これまで引きこもりは20~30代の若年層の問題というイメージがあったかもしれませんが、年齢関係なく誰にでも起こりうる可能性がある身近な問題であり、また長期化することで引きこもり当事者の高齢化も進んでいます。

  1. 学生時代に不登校になり、年齢を重ねてもそのまま引きこもっている
  2. 一度職に就いたもののなんらかの理由で退職し、そのまま復帰できずにいる

引きこもってしまった原因は人によってさまざまですが、脱却にはまずなによりも「本人の意思」が伴わなければ意味がありません。
なにか行動したいと思ってもらうには周囲が焦らず待つことも大切ですが、ただ待つだけではなく、支援機関に相談したり専門家のサポートを受けるなど、当事者が家族以外の他者と関わりをもつことが一歩を踏み出すきっかけになります。

成功事例の美談を信用しすぎてはいけない

長期化すればするほど専門家などの第三者が必要となるケースが大半ですが、長期化しているということはあらゆる方法を試したが改善せず、サポートしているご家族も疲れ果てて藁にもすがる思いかもしれません。
そんなときだからこそ「この先生に出会えてわたしはよくなりました!」「この方法を使えば誰でも引きこもりから脱却できる!」などといった成功事例の美談を鵜呑みにしてはいけません。

近年、ひきこもり支援を目的とした民間事業の利用をめぐるトラブルが報告されています。

消費者庁:ひきこもり支援を目的として掲げる民間事業の利用をめぐる消費者トラブルにご注意ください!

引きこもってしまった原因や本人を取り巻く環境は人によって大きく異なり、劇的によくなる方法というものは存在しません
また、公的機関以外で専門家を雇うとなると費用もかかりますし、期待値が大きいとそれだけうまくいかなかったときのダメージも大きくなります。

カウンセリングに行くことで症状が改善されることもありますが、少しよくなったからといってまっすぐとゴールを目指すのではなく、一歩ずつ階段を上ることをイメージして本人が自信を取り戻す練習であると考えましょう。

また、カウンセリングは本人だけでなく家族から現在の状況を話してもらい、これまでとは対応を変えることで少しずつ改善することもあります。

復帰には十人十通りの方法があります。なにより焦らず、見守る気持ちが大切です。

引きこもりからの復帰は平均2~3年かかる

引きこもりからの復帰は、平均2~3年かかると言われています。
ただ待つのではなく、適切な対応を行ったうえでかかる期間です。

病気や退職などを理由にしばらく休むことになり、周囲は「今は疲れているから休ませてあげよう」と本人を気遣っている間に1年、2年と月日が経っていつの間にか引きこもりになってしまうことも少なくありません。

厚生労働省によると仕事や学校に行かず、家族以外との交流をほとんどぜすに6ヶ月以上自宅に引きこもっている状態のことを“引きこもり”と定義しています。

長期化するとそれだけ復帰にかかる時間が長引くことになりますので、6ヶ月以上自宅に引きこもっている場合は公的機関への相談など、サポートを受けることを考えはじめてもいいでしょう。

理由もなく急に行動的になったときは精神疾患の疑いも

長期間引きこもっていたのに、急に外に出ようとしたり活動的になった場合は、あまり手放しに喜べるものではないかもしれません。

通常、段階を踏んで少しずつ立ち直っていくものですが、あまりに急変して元気になったときには一概に回復したとは言えず、なんらかのこころの病気になっている可能性があります。

正しい診断は専門医に行ってもらう必要があります。行動や言動に違和感を感じたときは地域の保健所精神保健福祉センターに連絡をしてみましょう。

電話相談からの面接を行ってくれるところや、外出が厳しいようであれば訪問支援を行ってくれるところもあります。

厚生労働省:こころの病気を知る

引きこもり家庭の多くは放置よりも過干渉だが、要因はひとつではない

子どもが引きこもってしまったのは自分の育て方が悪かったのでは、と親が自分を責めてしまうケースも非常に多いですが、引きこもってしまう理由はさまざまな要因が重なったものであり、「家庭環境」「就職」「人間関係」どれかひとつであると断定するのは早計です。

ですが親が子どもの先回りをしてなんでも世話をしてしまったり、子どもが自発的に行動する機会を奪ってしまうのはあまりいい環境とは言えず、自分で考え、対処する力を養うチャンスが少なくなってしまいます。

これは引きこもってからも同様で、引きこもっている本人は少なからず「このままではいけない」と焦りを感じています。そんなときに「はやく仕事を探さないと」「ちょっとでいいから外に出てくれないと心配だ」などといった声掛けをしてしまうと、余計悪化してしまうケースがあります。

過干渉でも放置気味でも引きこもるときは引きこもるのですが、どちらかに偏るのではなく基本的に見守る、そして本人が助けを求めてきたときに適切なサポートをすることが重要となってきます。

働きかけるよりもまずは気持ちを理解する

ただ待つというのも忍耐がいる作業です。本人に行動を起こしてもらうため、つい声をかけたくなる気持ちも非常に分かるのですが、まずは引きこもっている本人の気持ちを理解することが重要であり、またそれには専門家などの第三者が必要となってきます。

家庭内で会話があれば、少しずつ「今どういった気持ちか」を聞きだすことは可能かもしれませんが、引きこもりが長期化している場合は家族からの言葉にも過剰に反応してしまうかもしれません。

また、「この子はきっといま、こんな気持ちなんだろう」と想像しても、本人の考えとは全く異なっているかもしれません。
そして、本人ですら今自分がどういった気持ちなのかうまく整理できていない可能性もあります。

そのため、まずは家族が公的機関などに相談し、専門家を通してどう接していくのがベストなのか学んでいく必要があります。

本人は不安で、安心して話せる場を求めている

引きこもっている人の多くは自信を失い、周囲との関わりを断っているため自分の気持ちを安心して吐き出せる場所がありません。
インターネットなどを利用して外との交流を持っている可能性もありますが、やはり実際に会って話すのとでは感覚が大きく異なります。

引きこもりの人でなくとも、いきなり自分の気持ちを話して欲しいと言われても、ある程度の信頼関係がないとありのまま素直に話すことなんてなかなかできませんよね。
親だから話せない、友達だから言いたくない、ということも第三者であれば話せるかもしれません。

まずは本人との信頼関係、そして安心して話せる場をつくること。時間はかかるかもしれませんが、とても重要なことです。

引きこもりからの復帰には家族など身近な人物が適切な対処法を学ぶことが最善の解決策

引きこもりでつらいのは本人だけでなく、長期化すればするほど家族も精神的・経済的に苦しくなってきますので、家族も含めたサポートが必要となってきます。

本人だけに変化を求めるのではなく、これまで間違っていたかもしれない声掛けや接し方を変えることも問題解決へと繋がります。

大切なのは周囲と信頼関係をもって関わっていけるようになること。
部屋から出れた、笑顔を見せてくれたからといって一足飛びに外に出たり仕事を探すことをすすめるのではなく、遠回りに感じるかもしれませんが、専門家と協力しながら一歩一歩前に進んでいきましょう。

引きこもりからの復帰に必要なもの

引きこもりからの復帰は、ほとんどの場合は社会復帰がゴールとなります。長期化して重度であれば時間はかかりますが、目標をこまかく設定し、ひとつずつクリアしていきましょう。

家族からの精神的な自立

周囲との関わりがない場合、引きこもっていることの焦りや気持ちを理解してもらえないという苛立ちから、そのストレスのはけ口がしばしば家族へと向けられることが少なくありません。
ときに、「自分がこんなふうに育ったのは親のせいだ」と考えてしまっている場合もあります。これは経済的にはもちろん、精神的にも家族に依存してしまっている状態です。

依存している間は、自分ひとりで問題解決する力をなかなか身につけることはできません。まずは被害者意識をなくし、なにかいやなことがあっても人のせいにせず自分で考えて行動できるようにすること。

そのためには親も子どもから自立する必要があります。子どものためならなんでもしてあげたいと思うかもしれませんが、本当に子どものことを思うのであれば最低限のサポートだけしてあとは自分ひとりで立ち上がる力を身につけさせることも必要です。

規則正しい生活をし、時間管理ができるようにする

引きこもっていると、好きな時間に寝起きし外に出ることもないため時間や曜日の感覚がなくなってきます。
時間や曜日の感覚が鈍くなってくると、専門家の先生との面談の予定があってもその時刻に起きることができなかったり、約束の日程を守ることができなくなっているかもしれません。

無理に部屋から出る必要はありませんが、たとえば午前中には起きて夜は0時前に寝るなど、少しずつ体を慣らして規則正しい生活をしていきましょう。
面談に来てもらうにしろ、電話でやり取りをするにしろ、夜中に対応してくれるところは少ないですし、公的機関の場合はほぼ平日の日中であることが多いです。

いずれ社会復帰を目指すのであればなおさら、規則正しい生活と時間管理はできるようにしていきましょう。

第三者と話し、さまざまな価値観に触れる

専門家、あるいは仲のいい友人や支援施設の人でも構いませんが、第三者と話し、他人がどういう考えを持っているのか知ることも大切です。
引きこもっていることで将来に対して悲観的になるケースが多いですが、社会はそこまで厳しくなく、しかしすべて理想どおりにいくわけではないことも事実です。

外に出ることや働くことに対して大きな不安を抱えているかもしれませんが、ひとつの失敗でこれから先なにもかもダメになるなんてことはなく、選択肢はあなたが思うよりも多く、始めるのはいつだっていいのです。

ですが1人でずっと考え込んでいてもなかなか解決することは難しく、他人に相談してみることで思わぬ道が拓けることもあります。
人によって考え方はさまざまですし、あなたが深く悩むようなことでも気にならない人がいたり、逆にあなたにとってはなんでもないことで悩んでいる人もいるかもしれません。

そういったいろんな人の考え方やさまざまな価値観に触れることで、人と違うのは当たり前で、なにか人と違うからといって否定する必要もなく、また無理に受け入れる必要もないことを知りましょう。

引きこもってしまう人の多くはまじめで、他者に気を遣いすぎてこころが傷ついてしまったケースも少なくありません。
なにごともきちんと受け止めて白黒つける必要はなく、時には受け流したとしても、意外と周りは困ったりしませんよ。

就職が目標の場合は、ビジネス訓練を行う

就職を目標とするのであれば、専門の機関で就職支援を受けることもできます。30代後半までの支援機関は多数ありますが、40代以降の中高年支援機関は数が少ないです。

主要都市にある中高年支援機関をいくつか掲載しておきます。地方の場合はハローワークが主な就労支援機関となるでしょう。

正社員経験があるのであれば、転職エージェントに登録しておくのもおすすめです。無料で利用でき、職務経歴書の添削から面接のセッティングまで行ってくれます。

働くことに不安がある人や、人と関わるのが怖いという場合は、ハローワークの職業訓練の内容によっては企業実習を受けることができますので、気になる職業が実際はどんな仕事なのか、どういった人が働いているのか一度体験してみるのもいいでしょう。

いきなり新しい環境に飛び込んでみるのもいいかもしれませんが、「せっかく仕事が決まったんだからまた辞めるわけにはいかない」と自分に合わない職場で我慢を続けるとまたこころが疲れきってしまいますので、経済的に余裕があるのであれば、少し時間をかけてでも安心して働ける職場を探しましょう。

とりあえず求人を見てみるだけでもいいですし、少し余裕が出てきたらまずは短期のアルバイトを始めてみるのもいいかもしれません。
気になるな、と思うことがあるのなら、無理のない範囲でいろいろチャレンジしてみましょう。

引きこもりは長期化するほど第三者の手助けが必要だが、復帰はできる

引きこもる期間が長いほど外に出る不安は大きくなってしまいますが、正しい知識と手助けがあれば、時間はかかりますが復帰はできます。

そのためになによりも周囲が焦らず、本人の力を信じて見守ること。そして、家族も同時にサポートを受け、引きこもりに対する知識や対応の仕方を身につけることです。

解決には時間がかかりますし、一歩進んだかと思えば一歩下がってしまうこともあるかもしれません。ですがそれは復帰への道のりで十分起こりうることですので、辛抱が必要です。
頑張りすぎてクタクタになってしまわないためにも、専門家など第三者のサポートを受けて家族も気持ちに余裕を持つことが大切です。

まずは無料で利用できる公的支援機関に相談するのがおすすめです。ですが、相談員との相性が合わないこともあるかもしれません。そのときは、担当を替えてもらったり、違う支援施設を利用するのもOKです。

地域によっては面接の回数が制限されていることもありますし、外出が難しければ訪問支援してくれるところもありますし、当サイトでもメールで専門家に相談することができます。
復帰までの道のりは人それぞれ。家族にできる一番の支援は、ときに専門家の手を借り、本人が安心して気持ちを吐き出せる環境を作っていくことです。


SUPERVISION

この記事の監修者

キャリアファーマー

大学卒業後、東証一部重工メーカーで人事部採用担当、法人営業業務をあわせて12年経験。
その後人材ビジネスなどを経て2009年1月より、培ったコミュニケーション能力をいかしキャリアコンサルタント・講師業務を開始する。
正社員就職の支援も行っており、20年以上引きこもり経験者を社会復帰へと導いたケースもある。
自身も転職、失業経験があり、しっかり傾聴したうえで助言、提案を行うスタイルである。
その他にも高校や大学、専門学校、職業訓練校、企業、矯正施設等に出向き、幅広い層のキャリア、就職支援に携わる。
多方面にわたる経験とワイドな視点からどんな相談にも真摯に対応ができ、たくさんの引き出しを持ちあわせている。
資格(2級キャリアコンサルティング技能士・産業カウンセラー)


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