引きこもりの長期化はリスクのみ!悲惨な末路を迎えないためにはどうするべき?
厚生労働省の調査によると、日本にいる引きこもりの数は100万人をゆうに超え、支援団体であるKHJ全国ひきこもり家族会連合会が2016年に行った調査では、引きこもりの平均年齢は33.5歳、家族の平均年齢は64.1歳といいます。
- 15~39歳:推計54万1千人(2015年調査)
- 40~64歳:推計61万3千人(2018年調査)
性別で見ると男性、さらに年代別で見ると40代以上の割合が高く、中には子どもの頃から30年以上引きこもっているケースもあり、このまま長期化が進むとさまざまなリスクが浮き彫りとなってきます。
もはや引きこもりは日本が抱える社会問題であり、あなたやあなたの兄弟姉妹・友人など、いつ身近な人物が当事者になってもおかしくありません。
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目次
引きこもりは日本特有?
引きこもりは日本特有のものかと思いきや、実は韓国でも問題となっています。
日本と韓国の共通点は「家族愛」が強く、成人したあとも親と同居し続けることに比較的抵抗がない文化であるといえます。子が成人していても親からすれば可愛い我が子であることに変わりはなく、住処を提供し、食事を与え、面倒を見続けることも珍しくありません。
社会にうまく適応できなかった場合に支えてくれる家族がいるというのは非常に素晴らしいことですが、その環境がかえって引きこもりやすくなっているとも考えられます。
また、どこの国でも社会にうまく適応できない人はいますが、日本とは逆に成人したら自立する(家を出る)のが当たり前であるという文化圏の場合は引きこもることが出来ず、極端な例で言うとホームレスとなっている可能性もあります。
引きこもりは病名ではなく「状態」のこと。
引きこもりは病名ではなく、「引きこもっている」状態を表します。
引きこもりが長期化することによってうつ病などの精神疾患を引き起こす可能性もありますが、引きこもり自体は病気ではありません。
ですが、社会とのつながりを絶ってしまうことで孤独になり、その孤独がやがて不安や怒りに変わることも珍しくありません。
引きこもり当事者の多くは
- 社会や親に対する怒り
- 自分の置かれた状況に対する苦しみや悲しみ
- 外に出たいという欲求
- 将来への漠然とした不安
これらのいくつかの感情を抱え込んでいる場合があり、孤立することによって相談する場所も見つけづらくなっています。
引きこもり自体は病気ではありませんが、自分からSOSを出す方法が分からないというケースや、周囲が気付きにくい障害を持っている可能性もあります。(発達障害・精神障害・適応障害など)
エリート層ほど周囲に相談できない
成人した子が収入を得ない状態で長期間引きこもるには、それなりに経済的余裕のある家庭でないと成り立ちません。
また、裕福なエリート層ほど体裁を気にして周囲に相談しないケースが多く、適切な処置がなされないまま引きこもりの長期化を招いてしまうことも。
引きこもりのきっかけは受験や就職の失敗、人間関係の悩みや社会になじめないなどさまざまな理由が挙げられまずが、高学歴であるほど一度挫折してしまうとレールから外れたという感覚に陥りやすく、選択肢を増やしにくいのかもしれません。
もちろんエリート層だけに引きこもりが多いわけではなく、どの家庭でもじゅうぶん起こり得ることで、特に真面目で聞き分けがよく、あまり自分の意見を強く主張しないような(大人から見た)優等生ほど、積み重なった我慢が限界に達して急に心を閉ざしてしまう可能性があります。
日本では同調圧力が強く「普通」「周りと同じ」であることが求められます。
そして一般的と言われるレール・・・学校を卒業して、就職して、結婚して、といった人生を歩んでいないことで周囲から責められるような感覚を覚える人もいるのではないでしょうか。
一昔前に比べて多様化に寛容にはなったかもしれませんが、まだまだ「普通」であることを求められる場面は多々あるように感じます。
そしてこれがエリート層になると、進学や就職においてさらに目標が高く設定されることでしょう。しかし、周囲からの期待が大きいほどうまくいかなかったときのショックは大きく、気持ちの切り替えが難しくなります。
挫折して、引きこもったとしても早い段階で周囲に相談し、支援機関などを積極的に利用すれば復帰の道は見えてきます。
引きこもりの長期化はリスクが大きい
現状を変えず、引きこもり続けると最終的にはどうなってしまうのでしょうか。
また、引きこもりが長期化した場合のリスクとは、具体的にどういったことが考えられるのか見ていきましょう。
復帰に時間がかかる
まずひとつめは、長期化するほど復帰に時間がかかるということ。引きこもりからの復帰には平均2~3年かかるといわれていますが、引きこもっている期間が短く、かつ病気などが原因でなかったとしても、まずは生活習慣を整えるなど段階を踏んで復帰していきます。
これが10年以上引きこもっている場合だとより復帰は困難になってきますが、不可能ではありません。本人に頑張りたい気持ちがあるならなおさらチャンスはありますが、自分からSOSを発信できなくなっている可能性もあります。
家庭内でもほとんど会話がなかったりすると、コミュニケーションを取る練習から始めなければなりません。本人がどういった気持ちであるか分からない状況で1年、2年と支え続けるのは家族だからこそかなりの心労となります。
引きこもり当事者、またその家族のためにも、できるだけ早い段階で信用のできる人間、もしくは専門家に相談して対応策を考えることをおすすめします。
受け入れ先が減り、選択肢が狭まる
20代のうちであれば、公的支援機関も数多く存在します。就労支援も整っており、未経験の職種であっても採用される可能性はあります。
しかし30代になるとぐっと選択肢が減り、一度も社会人経験がないまま40代に突入してしまうと正規雇用で働けるチャンスを得るのはかなり難しくなってきます。
アルバイトでも40代以降で働ける場所は限られてくるため、何もしないままただ時間だけが過ぎるとどんどん選択肢が狭まります。
「なにかしなきゃいけないのは分かってるけど、なにをすればいいのか分からない」という方は、まずは無料で利用できる公的機関に相談してみましょう。
「8050問題」とは
近年、80代の親が50代の子を支えるという「8050問題」が取り上げられるようになってきました。
引きこもりが長期化するということは、引きこもり当事者も年齢を重ねるということ。そうなるとやがて親の介護と子の引きこもりが重なり、最悪の場合親子共倒れになってしまうケースも。
親が外に出られなくなったり、入院したりすることで食料の調達もままならず、やがて収入が途絶え誰にもSOSを出せないまま餓死する危険も出てきます。
これは
- 孤立したことによって周囲が異常に気付きにくい
- 支援が行き届いていない
- 手を差し伸べられていても当事者が断ってしまう
- 無理に介入もできずに事態が悪化してしまう
といったさまざまな要因が重なることによって引き起こされる最悪のケースのひとつです。
8050問題や引きこもりに限らず、社会からの孤立はさまざまなリスクを抱えています。
札幌母娘餓死事件の中心にあるのは、ほんとうに「8050問題」か。:HIKIPOS
親の介護にどう対処するべきか
そもそも社会との関わりがない引きこもりは、介護が必要になったときに支援機関に頼るということがスムーズにできません。
そのため、あらかじめ親子で話し合っておく必要があります。
地域包括支援センターは、親の介護が必要になる前に相談することができます。介護保険の手続きや自治体独自のサービス情報などをあらかじめ知っておけば万が一の事態にもあわてず対処することができます。
介護問題について親子で話し合うということはどの家庭でも大切なことですが、引きこもりによって孤立していると急に親が倒れたりした場合、誰にも相談できないまま問題を抱え込むことになってしまいます。
外にあまり出られないなど通常の生活を送ることが難しい場合でも、お弁当を自宅まで届けてくれる配食サービスなどもあります。まずは情報を集めて、介護が必要になったときの状況をイメージしておくことが重要です。
家にヘルパーが来ることも嫌がる場合も
引きこもり当事者の状態によっては、家に他人が入ることを嫌う場合もあり、ヘルパーさんを追い返してしまうといったケースも考えられます。
差し伸べられた支援の手を自らはねのけてしまうとより一層、事態の悪化を招くことになります。
そうならないためにも、親の介護が必要になる前に親子でしっかりと話し合うこと。そもそものコミュニケーションが難しい場合は、公的支援機関の無料相談を利用するなど専門家の手を借り、少しずつお互いが歩み寄る必要があります。
引きこもりの末路:親が死んだらどうなる?
引きこもって社会から断絶されていることで、親が亡くなったときの公的な手続きなどがスムーズに行えないケースも考えられます。
持ち家で家賃を支払う必要がなくても、固定資産税などがかかることを知らずにそのまま住み続けたり、安い賃貸マンションや市営住宅への入居をすすめられても自宅を離れるのを嫌がったりする場合も。
また、親が死亡すると年金の受給がストップし収入が途絶えてしまうため、そのまま親の死を隠して年金の不正受給をしてしまったり、死体遺棄で逮捕されるケースも稀に起こっています。
他に収入のアテがなく働けそうもないという場合は生活保護の申請が必要ですが、受給資格に当てはまらないこともあります。なんらかの精神疾患がある場合は障害年金の受給資格があるかもしれませんが、障害を抱えている引きこもりの方が一人で手続きをするというのは容易ではありません。
孤立し、収入が途絶え、住む場所までなくなってしまったら、行き着く先はホームレスか孤独死と考えてしまう場合もあるでしょう。もしかすると、自分の未来に悲観して自殺が頭をよぎってしまう人もいるかもしれません。
そういった事態を引き起こさないためにも、今から社会とのつながりを作り、何かあったときに相談できる人や支援サービスなどの情報を持っておくことが必要となってきます。
引きこもりから脱却するには
引きこもりの末路というと悲観的なイメージとなり、焦りを助長させてしまうことも考えられますが、一発逆転や早期復帰などといった言葉を売り文句にする民間の支援団体などには十分注意しましょう。
先ほども述べましたが引きこもりの復帰には時間がかかりますし、劇的に回復する方法などありません。一発逆転は難しく、また弱者を狙う詐欺集団がいることも念頭においておくことが大切です。
「子どもにお金を残すよりも、親の目が届くうちになんとかしましょう」といった言葉で藁にもすがる思いの親に膨大な金額を請求し、適切な支援など行われないまま引きこもり当事者が監禁されてしまうといったケースが過去に存在します。
トラブル続出 ひきこもり “自立支援”ビジネス | NHK クローズアップ現代+
引きこもりからの脱却には周りの支援が必要ですが、家族も心を疲弊してうつ状態になっている可能性があります。
疲れ果てて判断力が鈍っているところにつけ込んでくる悪質な業者が少なからず存在するということを頭に入れておいてください。
- まずは公的機関へ相談
- 相性の合うカウンセラーを探す
- 外出が難しい場合は訪問サービスが利用できないか相談してみる
民間企業に依頼するときにはあらかじめ施設を見学するなど、しっかりと見極めることが必要です。
公的支援機関としては、都道府県や政令指定都市にはひきこもり地域支援センターがあります。
年齢制限が設けられている場合は、生活困窮者支援窓口へ相談を。引きこもりに関する相談・支援も行っています。
本人に働く意思があっても、外で働くことが難しい場合もあります。そのときは引きこもりながら自宅でできる仕事を始めてみるのもいいでしょう。月に1万円程度であっても、自分で収入を得ることで少しでも自信を取り戻すことができるかもしれません。
脱却が難しい場合は、将来の資産状況をシミュレーションしてみる
介護問題もそうですが、急な事故や病気など、生きている限りはいつなにがあってもおかしくありません。
あらかじめ、お金についてもきちんと話し合っておく必要があるでしょう。
本人に月々いくらあれば生活できるのか把握してもらうことで、将来への不安も少しは軽減されるかもしれません。
持ち家や株などの資産がある場合は、それも含めて一度FP(ファイナンシャルプランナー)に親の死後どういう経済状況になるかシミュレーションをしてみてもらうのもいいでしょう。
漠然とした不安を抱えるよりも、「親が死んだら生活費はどうなるのか」「いくら足りなくなるのか」などの具体的な経済状況を知ることで「いまのままではいけない」と復帰へのきっかけにも繋がる可能性があります。
親子できちんと話し合うことができるまで時間はかかるかもしれませんが、いつかはぶち当たる壁。今から準備しておくことで心労も軽減されますので、まずはできることから始めてみることが大事です。
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