労働基準監督署に相談するとどうなるの?労働基準局、労働局との違いは?

仕事をしている中でトラブルが起きたり、自分ひとりでは解決できない企業との間で問題があった場合に、相談する機関として思い浮かぶのはいわゆる「労基(ろうき)」ではないでしょうか。
この労基こと労働基準監督署という名称はなんとなく聞いたことがある方も多いとは思いますが、名前がよく似た機関で「労働基準局」「労働局」というものも存在します。
これらはよく似ていますが、それぞれ異なる役割を担っているため、勇気を出して相談したのにろくに対処もしてくれなかった!なんて経験のある方は、もしかすると相談しに行く場所を間違えている可能性が。
というわけで今回は、このよく似た3つの機関それぞれの役割と違いについて解説していきます。
労働基準局・労働局・労働基準監督署それぞれの違いと役割
上記3つの機関は、一番トップに厚生労働省が存在します。
①厚生労働省>②労働基準局>③労働局>④労働基準監督署
上下関係で見るとこのようになります。
では、それぞれどう違うのか見ていきましょう。
労働基準局とは
労働基準局とは、厚生労働省の内部部局で厚生労働大臣が監督・指揮をしています。
労働者が直接相談する機関ではなく、あくまでも「厚生労働省の中にある部局」であり、労働問題に関する事務を所掌する立場となります。
労働基準局は全国で一箇所にしかなく、各地にある労働局、労働基準監督署の指揮・監督を行っていますが、必要に応じて違反企業の調査に立ち会ったり、法令の施行を出すこともあります。
労働局とは
正しくは都道府県労働局といい、「大阪労働局」や「東京労働局」などの名称で呼ばれています。
全都道府県に配置されており、厚生労働省の地方支分部局という立ち位置。
こちらは労働者からの相談を請け負う窓口が設置されており無料で相談することができます。
しかし都道府県労働局による話し合いのあっせんがあっても法律的な強制力はないため、企業が話し合いに応じず拒否された場合、解決は難しくなります。
相談すれば問題を解決してもらえるというわけではなく、あくまで相談内容を聞いたうえで助言や法律に関する知識を提供し、解決への選択肢を提示することが主な職務です。
労働局に相談できる主な内容
- 解雇、雇止め
- 配置転換、出向
- 昇進、昇格
- 労働条件の不利益変更
- セクハラ、パワハラ
- 同業他社への就業禁止など労働契約についての紛争
- 募集、採用についての紛争
- 営業者の破損などの損害賠償
自分でどの内容に該当するか判断できない場合でも、窓口で相談することは可能です。
労働基準監督署とは
労働基準監督署は、労働基準法に則って全国の会社を監督する行政機関です。
そのため労働基準法違反以外の問題に関しては対応は難しく、パワハラやセクハラなど民事的な問題を相談しても別の窓口を案内するか取り合ってくれない可能性もあります。
また、直接的に労働者の救済措置を行うのではなくあくまで「違反企業の取り締まり」を目的として設置された機関ですので、たとえば不当解雇などの相談をしてもグレーゾーンの場合は正当か違法かの判断は行いません。
明らかに労働基準法違反であるという場合は、あらかじめ証拠(タイムカードや給与明細など)を用意してから相談に行くといいでしょう。
労働基準監督署に相談できる主な内容
- 賃金未払い(未払い残業、深夜手当、休日手当が出ないなど)
- 長時間残業や休日がとれない
- 労働者の安全が守られていない危険な作業
- 雇用契約と労働条件が違う
- 勤めていた会社が急に倒産した
- 不当解雇など
労働基準法に違反しているかどうか判断が難しい場合は、訪問する前に電話で確認するか、都道府県労働局への相談がおすすめです。
また、労働基準監督署内に都道府県労働局の相談スペースが設けられていることもあります。
労働基準監督署に相談したらどうなる?
2018年7月からは、一部の業務が民間に委託されています。
そのため相談窓口で対応するのは外部から雇われた臨時職員であったり、法律の知識がない人である可能性があるため、その場ですぐに問題が解決したり詳しいアドバイスが聞けるとは限りません。
労働監督の民間委託を決定 平成30年度、規制改革推進会議 – 産経ニュース
ですが、明らかに労働基準法違反であるような場合には専門家によって法律にのっとった正しいアドバイスをしてもらったり、悪質な場合は会社に対して調査や是正勧告などの対応をしてもらえることもあります。
各機関の上下関係では一番下に位置する労働基準監督署になぜそのようなことができるかというと、強い権限をもった労働基準監督官がいるためです。
労働基準監督官とは
労働基準監督官には、2つの権限があります。それが「臨検監督」と「司法警察官」という権限です。
- 臨検監督:立ち入り調査が出来る
- 司法警察官:逮捕や強制捜査ができる
この2つの権限がある労働基準監督官がいるため、強制捜査や立ち入り捜査をして違反企業の摘発を行うことができます。
ですが、年間約100万件もの相談に対し全国に配置されている労働基準監督官の人数はわずか3,000人程度と明らかな人手不足であり、どうしても人命に関わる問題が最優先されます。
そのため、労働基準法に違反しているという確実な証拠がなかったり、よほど悪質でない場合は動いてもらえないこともあります。
『過重労働撲滅特別対策班』を新設
2016年に通称「かとく」と呼ばれる長時間労働に対する特別対策班が新設され、より取り組みが強化されています。
労働基準監督署に相談する場合は、事前の準備をしっかりしておく
先ほども述べたとおり、年間100万件もの相談に対し、全国に321署ある労働基準監督署に配置された労働基準監督官はわずか3000人程度。
すべてが違反企業とは限りませんが、単純に1人あたりの担当数を計算すると年間約333件もの事例を扱うことになります。
しかし現実的に考えてすべて解決するのはまず不可能ですので、相談内容があやふやであったり証拠が揃っていないとどうしても優先順位を下に位置づけられてしまいます。
明らかに労働基準法違反であり、なにかしらの対処をしてもらいたいのであればこちらも事前にある程度の準備をしておく必要があります。
相談前の準備
相談前の準備とは、労働基準監督署に訪問したさいに「情報の整理」をしてわかりやすく内容を伝えられるよう、関連する「証拠」をそろえておくこと。
また、実名で「申告」することもポイントとなります。
情報の整理とは?
ハラスメントによる損害賠償請求などは労働基準監督署では解決できないため、まずは、相談したい内容が労働基準法違反に該当するか確認しておきましょう。
その上で、相談内容を簡潔に伝えられるよう整理しておくことも重要です。
整理の仕方としては
- どのようなトラブルが起きているか
- トラブルが発生したのはいつか
- 具体的にどのような被害にあったか
- トラブルを証明できる証拠
これらを揃えておきましょう。
なにが証拠になるの?
提出する証拠ですが、トラブルの内容によって変わります。
就業規則やタイムカード、給与明細など証拠になりそうなものをコピーしたり写真に撮っておくといいでしょう。
申告ってなに?
申告とは、違反行為を告発し対応を求める手続きのこと。
相談だけですとアドバイスをもらって終わり、となってしまうかもしれませんが、申告手続きを行い、さらに証拠がしっかりあると動いてくれる可能性が高まります。
実名で申告することで、より緊急性が高いと認識してもらえるからです。
ですが、もちろん匿名での申告もできますので、状況に合わせて判断してくださいね。
電話やメールでも相談できる
実際に違反企業を申告する場合は直接訪問がいいと述べましたが、電話やメールでも相談することはできます。
トラブルが労働基準法違反にあてはまるのか良く分からない場合や、なにが証拠となるのか判断が難しい場合はまずは電話やメールで確認しておくといいでしょう。
公務員や教員は相談窓口が別
どの職業でも仕事上のトラブルが起こる可能性はあります。
もちろん公務員や教員も相談することはできますが、上司とのつながりがあるかもしれない同じ公務員に相談するのは少し不安ですよね。
そこで、安心して話すことのできるように窓口が別に設けられています。
- 社会保険労務士
- 組合(※加入が必要)
- 国の機関
- 産業医
- 所属の相談員
「国の機関」とありますが国家公務員(※1)、地方公務員(※2)の方は労働局での相談はできませんので、以下の窓口が設けられています。
地方公務員・・・地方自治体の人事院会
(※1)・・・行政執行法人職員を除く
(※2)・・・地方公営企業職員、特定地方独立行政法人職員、技能労務職員を除く
公務員や教員が労働局で相談できない理由
労働基準監督署や労働局では労働基準法や男女雇用機会均等法などに基づいた相談内容を取り扱っていますが、そもそも国や地方公共団体と個人の公務員の間には契約関係がないため、労働契約法や労働組合法が適用されません。
その代わり、
- 地方公務員法
- 国家公務員法
- 人事院規則
- 条例
が適用され、さらに一般職国家公務員は労働基準法の適用も排除されます。(一般職地方公務員は適用あり)
公務員の労働問題は適用される法律が違うため、民間とはかなり異なります。
結局どこに相談したらいいの?
機関によって取り扱う問題は違うということが分かっていただけたかと思います。
トラブルごとにどの相談機関を利用すればいいのか確認していきましょう。
まずは社内の相談窓口
労働問題に出くわした場合は、まずは社内の相談窓口に行くことをおすすめします。
ですが、社内の人間関係など万が一相談した事実がばれてしまうのではないか不安だという場合は、社外の匿名で利用できる相談窓口などを利用するといいでしょう。
労働基準法に関する問題は労働基準監督署
賃金未払いや長時間残業など、労働基準法に違反するであろう問題は労働基準監督署へ。
いじめやパワハラなどは都道府県労働局
職場いじめやパワハラなどが原因の解雇などは都道府県労働局へ。
社内に相談窓口がないという場合もこちらがおすすめです。
トラブルの内容が複雑であったり法律の判断が難しい場合はまずそちらに相談しましょう。
弁護士など専門家に相談したい場合は法テラス
弁護士などの専門家に相談したいがどこに行けばいいのかわからない、という場合はトラブル内容に合わせた関係機関を案内してもらえます。
まとめ
労働問題にはさまざまな相談機関がありますが、それぞれ違った役割を持っています。
もしなんらかのトラブルに巻き込まれてしまった場合は、トラブルの内容がどんな法律に触れるものなのか確認し、相談機関を使い分けましょう。
「訴えたい!」という場合は直接弁護士事務所に相談するほうがスムーズですし、そこまでは思っていないけどなんとか解決したい、とにかく誰かに聞いてもらいたい・・・といった場合は、まずは都道府県労働局へ。
匿名での相談もできますし、電話でも受け付けています。
国の機関のため利用時間が平日の9時~17時の場合が多いため、訪問する場合は休みをとって行かれる方もいるかもしれません。
せっかく勇気を出して訪問したにも関わらず「相談内容はこの機関では解決できない」「証拠がないと動けない」などの対応をされてしまわないよう、労働基準監督署に申告される場合は事前の準備をおすすめします。

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